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先生がいたから頑張れた

 今朝から始まった新聞記事の見出しに釘付けになる。これは、ある高校の取り組む記録。

 『3年3組の沖本飛斗さん(18)は、元担任の中根豊講師(62)と握手した。「先生に助けていただいて、卒業できました」…』

沖本さんは、小学2年で父親が病死し、母親と2人暮らし。母はスーパーや清掃員のパートで忙しく働いていた。幼い頃から母は、缶酎ハイに手を伸ばしていた。母が残した缶を見つけては捨てた。母はアルコール依存の治療や患者会に通い、治す努力をしていた。そんな母を助けたかったが誰にも相談できなかった。 その高校を受けたのは、家が近かったから。入学して1カ月経った2019年5月11日。土曜授業から帰宅したときだった。「ただいま…」。感じたことがないくらい、空気が重かった。寝室に入る前に、何か起きたかを察した。 母は、顔から崩れ落ちたように、ベッドの脇に倒れていた。食事ができず「入院しようか」と話していた矢先だった。救急車を呼び、必死に心臓マッサージした。その日は、16歳の誕生日だった。 翌日から、担任の中根先生が自宅に来て、葬式にも参列してくれた。「学校では、何事もなかったようにしてほしい」と頼んだ。 でも。朝、「行ってきます」を言う人がいない。帰宅する家は、すっからかんで暗い。ふとした瞬間に孤独が押し寄せた。「誰もおらん…」 学校では一人じゃなかった。朝、教室に入ると、中根先生が黒板の前のイスに必ず座っていた。沖本さんが毎朝最初に「おはよう」を言う大人は、中根先生になった。先生の付き添いでケースワーカーと話した。里親の元で数人の子どもが暮らす「ファミリーホーム」に住むことが決まった。先生は、親戚のおじいちゃんのようだった。 授業は、中学の「学び直し」から始まった。この高校では、1年次に、国語•数学•英語を基礎から学ぶ「モジュール授業」がある。集中力が続くよう、1コマ30分。数学は分数、英語はbe動詞から学ぶ。 「俺、中学行ってなかった」「私も行かんかったわ」。友達と話すと、不登校だったのは自分だけではないと気づいた。「みんなで頑張りたい」と思うようになった。沖本さんが友達に勉強を教える姿を、中根先生は見守った。 別の先生に誘われ、生徒会に入った。2年生になり、文化祭のテーマを「虹」に決めた。「みんなの個性の色を生かし、学校に虹をかけよう」との思いを込めた。 孤独を感じる人たちも、その人らしく過ごせたらいい。学校だけでなく、社会がそうなればいいと思うようになっていた。生徒会の活動や勉強が面白くなるにつれ、自然と将来の夢が浮かんでいた。「誰もが前向きに働ける会社をつくりたい」 大学で経営学を学ぼうと、3年の秋から、1日10時間勉強した。そして2月、一般入試で大学の経営学部に合格した。 卒業式の2日前、3年間の成長を発表する「エンパワメント学習発表会」でこう話した。

 

 この言葉が素晴らしかったので、長くそのままを引用してきた文章に、一区切りつけて、皆様のお心に印象づけたい。

 

「学校では、努力すること、人に頼ることの大切さを学んだ。しんどいこともあったけど、全てが自分の将来につながると思う」

 

努力することは出来ても、人に頼ることが出来ず、悶々と悩み苦しむのが日常。それを18歳にして学んだ沖本さんには、心からの拍手を届けたい。そして、「本当によく頑張ったね。これから、貴方なら大丈夫」とエールを送りたい。