折々のことばで、芸能界を一世風靡した俳優の言葉を見る。
「役者やっていて一番嬉しいことは、おれと一緒のシーンに出たやつがよう見えること」
知る人ぞ知る、火野正平の言葉である。
思わず、仰け反った。
彼の若い時には考えられなかった言葉だから。
彼は、歳を重ねることで、自分が輝くよりも、自分が横にいることで隣の人がもっと輝くのを歓ぶ俳優となった。
そして、自分が歓ぶのではなく、他人を歓ばせて自分も歓ぶというのがあたりまえのようにできるようにもなった。
これは、年齢である。
俳優は、歳をとると、若い時のような主役も頂けなくなるし、メークによる修正も時間が掛かる。
伊達に歳をとっていない、という言葉の意味が、この彼の言葉で理解出来た。
私達凡人も、そう。
若い時は、口に棘があっても、年齢で許して貰える。付け焼き刃でその場を乗り切ることも可能。
だが、皺もシミも目立つようになると、「そんなことも知らないの?」と馬鹿にされだす。
そこで、これでは恥ずかしいと勉強するか、萎縮して引っ込んでしまうか。
火野正平は、お客さんの立場になって、自分というものを客観視出来たから、他人を歓ぶこばせて自分も歓ぶことをあたりまえにできるようになったのだろう。
誰だって、歳をとる。
これは、美智子皇后だって、クレオパトラだって、私だって皆同じ。
だからこそ、歳を重ねて良かった生き方をしたい。
周りの老若男女の言動を許して、ニコッと出来るのも、その一つではないかな。
皆様は、どんな歳を重ねていきたいですか?