やっと心が目の覚めるコラムに出合う。
新聞の「ひと」だ。
歌舞伎の大名跡を襲名した十代目 松本幸四郎さん(44)とタイトル•共に、きりりとした横顔が写っていた。
書かれている文章に、自身も彼と同化した。
「プレッシャーもあります。少しは親孝行になるかな。でも、名よりも、何をしていくかということが大事です」
…
20歳の頃、正座がつらいことがあった。声も出づらかった。理想とする姿と自身との開きにも悩んだ。
「向いていない。やめたい」。悩み抜いた揚げ句、「歌舞伎が好きという一点で一番になろう」と吹っ切った。
この最後の「 」の心意気に敬服した。
上手で一番にはなれないし、判断も不可能。
でも、好きというのは、その人の顔や仕草に表れる。
だから、とことん突き進めていける。
きっとそれが客観的にお分かりになるのは、全てをご存知のお天道様だけではないかな。
まだ彼がお父様•お母様と三人で出演されていたコマーシャルの若々しい姿が、記憶に残る。
あれから彼は、どれだけ切磋琢磨して歌舞伎の道を歩んできたのか。
結びの言葉にぐっときた。
「最近、汗の量が減ってきた。無駄な力が抜け、ほどよい力で自己解放できている証拠。『歌舞伎職人』という言葉にもひかれます」
日々の努力は、身体が覚えたようだ。
いつか、ご子息が同じ名前を襲名される時に、父親としての言葉を見てみたい。